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2019/12/19

税務調査コラム  ■医業の節税・税務調査コラム ★医療法人の事業税の取扱い社会保険診療に係る所得が非課税とされるのは?★会社設立・確定申告・融資対策・税務調査が不安で税理士や税理士事務所をお探しなら宮崎税務会計事務所の無料相談にご相談下さい。

★医療法人の事業税の取扱い社会保険診療に係る所得が非課税とされるのは?

T 医療法人に対する事業税の取扱い

昭和27年、地方税法の改正により、社会保険診療に係る収入金額及び必要経費を収支計算から除外する措置が講ぜられました。

これは国民皆保険の定着を目指すための医師会に対するアメ政策といわれています。

社会保険診療に係る所得が非課税とされるのは、次に掲げる法人です。


@医療法人

A医療事業を行う農業協同組合連合会(JA厚生連)


地方税法第72条の23第2項に、医療法人又は医療施設に係る事業を行う農業協同組合連合会が社会保険診療につき支払を受けた金額は、益金の額又は個別帰属益金額に算入せず、また、当該社会保険診療に係る経費は、損金の額又は個別帰属損金額に算入しない、と規定されています。

B公益法人等が行う医療事業(→法人税非課税法人でありそもそも非課税)


地方税法第72条の5第1項において、公益法人等の事業の所得又は収入金額で収益事業に係るもの以外のものに対しては、事業税を課することができない、と規定されています。

C人格のない社団等が行う医療事業


地方税法第72条の5第2項において上記と同様に規定されています。

したがって、株式会社等が行う社会保険事業、例えば株式会社が運営する調剤薬局における保険調剤業務や、株式会社が運営する訪問看護ステーションにおける訪問看護業務などに係る社会保険診療(調剤)収入については、非課税とはなりません。

なお、医療法人は、法人事業税では特別法人とされます。このため、事業税の税率が優遇されています。また、事業税について予定申告義務はありません(法人県民税についてはあります)。

U 事業税の課税所得の計算方法

医療法人の事業税の課税所得の計算方法には、次の2つのやり方があります。


1.経費配分方法

2.所得配分方法

一部の県においては経費配分方法で計算することも認められているようですが、概ね所得配分方法のほうが有利となります。

なぜなら、総所得金額を収入あん分して課税所得を計算する所得配分方法に比べて、経費配分方法では社会保険診療に配分する経費が多くなるような計算方法であるため非課税所得が小さくなり、その結果総所得金額から非課税所得を控除した金額(課税所得)が大きくなってしまうからです。


(1)経費配分方法による計算方法

経費を次のように区分します。


@社会保険診療のみに係る経費

A共通経費のうち収入あん分で算出した社会保険診療に係る経費

B上記@+A=社会保険診療に係る経費

C事業税の課税所得=総所得金額−(社会保険診療収入−Bの金額)

なお、共通経費を共通医療直接費と共通一般管理費等とに区分し、それぞれ別の収入あん分率で計算させる県もあるようです。

(2)所得配分方法

一部の県を除いてほとんどの都道府県が採用している計算方法です。

医療法人が事業税の申告を行う場合には「所得金額に関する計算書(地方税法施行規則第6号様式別表5)」を提出しますが、この別表5を作成するための資料として「医療法人に係る所得金額の計算書」を作成し提出することになります。

この「医療法人所得計算書」では、総所得金額を社会保険分の医療収入金額に係る分とその他の収入金額に係る分とに区分する計算を行います。

具体的には、医療事業に係る収入金額に占める社会保険診療に係る収入金額の割合を求め(小数点第4位未満切上げ)、この割合を総所得金額に乗じて非課税分の所得金額を求め、総所得金額から非課税分を差引くことで事業税の課税所得を求めます。

V 計算にあたり注意すべき事項


(1)あん分にあたり、収入金額に含めないもの

社会保険分の収入金額以外の収入について、総所得金額のあん分計算にあたり収入に含めないものには、次のようなものがあります。


@国税又は地方税の還付金で法人税法上益金不算入となる金額

したがって、還付加算金は収入に含めなければなりません。

A従業員の社宅等の使用料及び従業員の食事代収入

したがって、役員に係るものは収入に含めなければなりません。

B引当金の戻入・準備金の取崩による益金算入額

C土地等の譲渡に係る益金算入額

D償却資産の売却収入金額(売却時の帳簿価額を超えない部分に限る)

したがって、帳簿価額を超える部分(売却益部分)は、収入に含めなければなりません。

E医薬品等仕入に係る仕入割戻し(リベート)として益金(雑収入)に計上した額

卸については、現在リベート方式はほとんどなく、請求書の中で値引き処理していると思われますし、メーカーについては卸を通して納入単価を下げることで対応しているようです。

(2)法人税の計算において措置法67条の適用をうけた医療法人の場合

ほとんどないと思われますが、社会保険診療報酬の所得計算の特例の適用を受けた医療法人(個人開業医における措置法26条適用と同じケース)についは、この適用によって計算された社会保険診療分の所得金額を非課税として、総所得金額から差し引くことで事業税の課税所得を計算します。

なお、法人税申告においては別表10(10)を作成し、これを事業税申告書に添付するとともに、第6号様式別表5(「所得金額に関する計算書」)の備考欄にその旨を記載します。

(3)消費税の課税事業者の場合

消費税の課税事業者で自由診療収入について税込経理をしている場合には、「医療法人に係る所得金額の計算書」に記載する金額は、税抜きの金額に拠ります。

また、消費税の確定申告書を添付します。 

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